できる後輩と可能性の蓋
「今持ってる担当の仕事にだけ専念させてくれませんか?」
昨日の朝方私の左斜め前の席からそんな話声が聞こえた。
後輩の話声だった。
彼は今の仕事が納期に間に合わないこと、経験値的に業務を進めることが難しいことを
係長に説明していた。
確かに彼がやっている業務はなかなかヘビーだ。
かなり炎上している案件だし初めて持つ担当の為やったことのない仕事も多い。
あまり経験値のない彼がそういいたくなる気持ちもわからなくもない。
誰しも初めてのことには抵抗があるものである。
私も初めて担当を持ったときはでひぃひぃ言っていたので気持ちはわかる。
しかし彼の打診に私の係長は困っていた。
理由は今私たちを取り巻く環境にある。
人手不足で仕事量も多く部署の立場が弱いこともあり
突発で専門外の仕事が半ば押しつけ気味に入る状況である。
そんな状況では一人ひとりが自分の仕事のみに専念するのは非常につらい。
スペシャリストではなくオールラウンダーな人材を管理職として欲しい状態である。
その日係長は彼が持っている業務の一部をほかの担当者にも割り振りその日は終わった。
私の彼に対する評価はまじめで優秀だ。
言葉遣いも仕事も丁寧だしロジカルに考えることができる。
賢い人間だと思う。
また物事の矛盾点に気が付ける鋭さも彼の長所だ。
私はよく彼に仕事を振る時があるのだが内容に対して指摘されるとドキドキする。
仕事も最後までしっかりやるので責任感もある。
それゆえに今彼が持っている仕事はこなせない仕事量ではないし業務を割り振るのはもったいないなと私は思う。
彼はよく「自分は経験値がないのでわかりません」という時がある。
今回の打診でも「経験値」という言葉をよく口にしていた。
そんな慎重な性格は彼の個性だと思うが逆に言うと
自分の可能性に蓋をしているなと私は感じる。
それを無自覚にやっているとしたらもったいないと私は思う。
仕事なんて成果を上げようとするのであれば毎日が新しい仕事である。
同じ仕事をして上に上がるのは非常に難しいと思う。
もし彼が今後今の会社で上に上がっていきたいと考えているのであれば
そういったバイアスはどこかのタイミングで解きほぐさないと彼の為にならないと私は思う。
逆に自分の仕事はここまでと実は割り切るタイプだった場合は私はそのままでいいと思う。
仕事なんていくらしてももらえる額はたいして変わらないのだから割り切って自分のできる範囲で仕事をするのも一つの考え方である。
ただ彼の性格と年齢、職場を取り巻く状況を踏まえると前者のアドバイスをして今持ってる業務を任せるのが適切なのかなと思う。
できるでしょ?と高圧的に理詰めせずあくまで仕事に対していろんな考え方がある前提のもと経験値ではなく長所、能力値、将来性を踏まえて仕事を任せたいとお願いするのがよいかと思う。
どこかのタイミングであまり自分を過少評価しない方がいいよと話そうかなとも思う反面余計なお世話かなと思ったりと、
たいして偉くもない私が後輩君の将来を帰りの車の中で悶々と考えた今日でした。
それでは また明日。